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へっぽこベーシスト兼地質屋の卵な大学院生yulico がうだうだと音楽や環境問題ネタや古生物学にまつわる話やただの日記やネタっぽい記事などを垂れ流している,web-log 様の何かです.

yulico の脳はかなりの低スペックですが,マルチタスクには対応しているので内容が散漫になりがちです.また,暴言,毒,下ネタが多分に含まれます.服用には十分ご注意下さい.

(※注意点)
・内輪でしか通じないネタは排除しているつもりです.
・高校生に通じる日本語を書いているつもりです(申し訳ありませんが,中学生以下は想定していません).
・あくまで日記の延長ゆえ,エンターテインメント性は保証しません.

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2009年11月15日

なんで若手研究者はすぐ死んでしまうん?

前記事前々記事では,あくまで感情論を交えずに,できるだけ理性で書こうと思って書いてきたわけだけれど,それらを書きながら,また,事業仕分け(WG3)の音声ファイルを聞きながら,沸々と湧き上がる怒りの感情が抑えきれなくなってきたので書きます.

(※個人的な,どす黒い,醜い感情論になるので,以下,閲覧注意)

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僕自身が,研究者を志望しはじめたのは,記憶にはっきりと残らないくらい昔のことです.小学校の卒業文集には既に,漠然と「科学者になりたい」,なんて書いていたと思います.もっと具体的に,研究者になりたいと思いはじめたのは,過去にこの記事で書いた通り,修士以降のことになります.まぁ,研究自体の面白さが実感として理解できて以降のことです.まぁ,中二病を患っているので,いつもは「研究者になりたいんじゃなくて研究者として受け入れてもらえるかどうかだ」なんて格好をつけていっていますが,自分の研究分野でひとかどの成果をあげて,評価されたい……という野望はありますし,できることなら自分のやりたい研究をやりたいようにできる立場になりたいと思っています.そして,そのための努力はしてきたつもりでもいます(多分,ほとんどの僕と同じような立場の人はそうでしょう).

最先端の研究を知りたいと思ったし,追いつき,追い越したいと思ったから,英語を勉強して沢山論文を読みました.
単純に,知りたかったし,理解したかったから,自分の研究・知見を深めるために,ヒグマだらけの山を歩き回って,基礎データを集めたり,室内実験用の試料を採集してきたりしました.
新たなデータが増えることが喜びであり,発見であったから,休日を返上してデータだし作業を続けました.何日も学校に泊まり込みました.

……こんな努力自体,好きでやってきたことですし,別に苦痛に感じるようなことはありませんでしたけれど,そういう行動の原動力の中に「いずれはこれらが評価されて,研究者になる!好きな研究を仕事にできる!」という思いが確実にあったわけです.そんな僕のような学生や研究員のもつ,ちっぽけな夢,研究に身を削る覚悟,そして研究者志望の若者の将来の可能性を,簡単な予算取りゲームの結果,奪う権利が国家にあるのでしょうか(奪う,というのは大袈裟ですがボッキリと心が折られたのも紛れもない事実です)?敢えて陳腐な言葉遣いをしますが,研究者志望の人間の夢や希望の源を断つことが,本当に国民のためなんでしょうか?

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事業仕分け(WG3)の音声ファイルを聞いていると,(この議論自体の分析や細かい批判については多くのblog で行われているようですので,ここでは割愛しますが)「議論・論点のすり替え」「(文科省の提示する)実際の数字に裏打ちされていない,印象だけでの決めつけ,批判」「議論の齟齬」「本来審議すべき案件と別件を持ち出しての無理矢理な批判」などが続々飛び出してきて頭が痛くなります.まさに詭弁です.こんな1時間そこそこの議論とも呼べないようなものだけを見せつけられて(実際には事前折衝やなんかがあったとしても),それでどう(将来を奪われた)自分たちの気持ちに整理をつけろというのでしょう?急に「死ぬか,やめるか,いま以上の(方向性は一切示さないけど)努力をしろ」と,宣告されて,どうやって希望を持てというのでしょうか?……仮に努力を続けても,「仕分け人」の判断ひとつで,研究プロジェクトの予算そのものが吹っ飛んでしまうかも知れないのに…….

そして,これらの仕分けによって削減された予算が「公立高校無償化」などの愚策に消えていくという,やるせなさ.悔しさ.ここに至るまでの自分に投資してきた時間や金が一体なんだったんだろう,という空しさ.…….

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「(大学院重点化に)踊らされた人間が悪い」
「研究者への門戸が狭くなるのであれば,更に努力をすれば良いだけ」
「役に立たない研究をしていたのが悪い.役に立つ研究になればいい」……etc.

……様々な無責任な声が聞こえてきます.いや,無責任と書きましたが,もしかしたら世間一般でいうところの正論なのかもしれません.立場が違えば見え方も違うことでしょう…….もしも,僕がこんなところにおらず,大学卒業後に適当な企業に就職していて,サイエンスの世界から離れて,勘も鈍っているのだとしたら,こんなセリフを吐いているのかもしれません.でも,そんなことはわかりません.逆に言えば,そういう立場の人たちには,僕らの立場がいま感じている絶望や失望,将来への不安がわかることはないでしょう.それなのに,それらの絶望感が解らない人たちの決めつけた「仕分け」だけが正義としてまかり通るのです.理解しあおうとお互いに努力することなしに,一方的に…….

本当に,ただ,悔しいです.

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なお,こんな愚痴や感情の吐露を導きだすのは,現政権のダブルスタンダードや,本来の方法論を歪めた "事業仕分け" そのもの(販売元(?)である構想日本の提唱する事業仕分けと現行政権で行われている "事業仕分け" は全くの別物です),その他,諸々の現政権に対する不満が鬱積しているからなのですが,それは,もっと深い政治の話になりますし,本題から大きく外れてしまうことなのでここでは語りません.
posted by yulico at 10:06| Comment(0) | TrackBack(0) | おべんきょう | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

研究したいことも研究できない こんな世の中じゃ Poison ♪

前の記事関連で,もう少しいいたいことがあるので書きます.

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世情を眺めてみると(と言っても,僕の見ることができる世情なんて2ch やどこぞのつぶやきなどの限られたものな上に偏っている意見ではあるのだけど),どうやら(関係者を除く)世の中の多くの人々は,「研究者に死ねというのはいくらなんでもヒドい(よく解らないけど,科学技術を捨てたら日本にはなにも残らないんじゃないの?派)」という意見と,「基礎研究が何の役に立つのか説明できない方が悪い(自己責任・自業自得だよ派)」という意見と,「英断だ!科学研究関連予算なんて本当に無駄だから全部カットしてしまえ!(科学研究なんていらないよ派)」という意見と,「事業仕分けの仕方に問題があるから,見直すべき(そもそも制度が問題だよ派)」という意見に分かれている気がします.大体の場合,前の2つの意見が枢要を占めて言い争いをしていて,後の2つの見解を述べる人がちょこちょこと現れる,という比率です.そして,多くの場合,そこに,僕のような立場の研究者見習い〜ポスドク研究員と思しき人々のあげる悲鳴や断末魔の叫びのような意見が挿入されています(例:http://hamusoku.com/archives/768639.htmlhttp://blog.livedoor.jp/dqnplus/archives/1337343.html など).

僕自身がこの政策方針に対して思うことは,前の記事で言ったので,そちらを参照願いたいのですが,端的に言って世紀の愚策だと思います.

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今回の事業仕分けは(若手研究者の大粛正に留まらず),今後の研究者の研究計画策定そのものに大きな影響を与えるであろうことが容易に予測されます.即ち,政権をもつ人々(や全く研究に理解のない多くの一般市民)にとって「意味があると思い込ませられるかどうか?」が,今後の研究プロジェクトの策定における最大のポイントになるでしょう.

もちろん,これまでもこういう論点はあって,多くの研究者は「(社会や国のためになるという)建前がないと好きな研究ができないんだー」なんて冗談めかして語っていたものです.しかし,今回の仕分けの結果を受けて考えると,これまで以上に無知な人間が研究予算に口を出し,審判していく世界になることが容易に想像できます.つまり,これからは,これまでのような文部科学省の役人よりもさらに研究に対して無頓着な一般人に毛の生えた程度の "仕分け委員" さまが,研究自体の生死を決めていくことになるのです(つまり,省内の予算折衝までの段階で専門家集団によって高く評価されていた研究事案であっても,"仕分け委員" さまの裁量ひとつで予算そのものが吹っ飛んでしまうことがあり得るわけです.少し穿った見方かも知れませんが,"仕分け委員" さまが日本語を理解できないお馬鹿さんだった場合,「(私たちにはその研究が理解できないし,必要とは思えないから)予算は出しません」という事態になり得るわけです).

えー.

なんだか,最早,ギャグかなんかのようですが,スーパーコンピュータ関連の予算削減の記事などを読むと,

「(コンピューター性能で)世界一を目指す理由は何か。2位ではだめなのか」という仕分け人の発言。

「一時的にトップを取る意味はどれくらいあるか」(泉健太内閣府政務官)「一番だから良いわけではない」(金田康正東大院教授)「ハードで世界一になればソフトにも波及というが分野で違う」(松井孝典・千葉工業大惑星探査研究センター所長)などと、同調者が相次いだ

http://sankei.jp.msn.com/politics/situation/091113/stt0911131914010-n1.htm より引用)

……なんていう数々の危険発言が飛び出しており,どうやら夢でもネタでもなんでもなく,現実の模様です(つーか,同調者の中にもろにスパコンを使った研究で被害が出そうな人間がいるのがアレですが……).

そのうち,研究者が「こういう意味で社会に役に立つ」という観点からしか研究テーマを探せない世界がくるんだろうなぁ…….それって,本当に日本の科学の終わりですよ.

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研究ってさ,そりゃ,社会の役に立つんだったら,そういう研究のほうが好ましいと,僕だって思いますよ.でも,「現時点で社会の役に立つことが解っている研究」って,基礎科学の分野にはほとんど存在しないし,仮にあったとしても基礎科学としては,ほとんど終わりかけな(先の見えている)分野なわけで……(応用になると基礎科学の範疇ではなくなるので).仮に「役に立つ可能性がある研究」というところまで範囲を広げたって,その数や将来性はたかが知れています.

じゃあ,そういう研究を見つけるためには,どうすれば良いかといえば,単純に研究者と研究分野の多様度を高めるしかないと思います(そうでなければ,ノストラダムスクラスの予言者を育成して,次にどの分野が大々的に発展するかを予言させるために国家予算をつぎ込むべき).各々の研究者に,やりたいことをやりたいようにさせるべきなんです.そこに(科学分野に関して)無知な第三者による評価やなんかが入り込むこと自体が,本来,ナンセンスなんです.

本来,貴賤も尺度もなにもないものに対して,適当に線を引いて,無理矢理,「評価(と称するなにか)」しようとしたって,なにも評価できるわけがないはずなんだけど,そんなこともわからないんだろうか…….それとも,本当に「民意(と称するなにか)」が研究者の生死に勝ると思っているんだろうか?(多分,後者なんだけど)
posted by yulico at 05:49| Comment(1) | TrackBack(0) | おべんきょう | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

日本の科学終了のお知らせ

こんばんわ.yulico です.

……最近,忙しいのでゆっくりと文章を書く余裕もなく,この書き出しで文章をはじめるのも随分と久し振りな気がします.ニートもどきの遊び人のように見えるかもしれませんけれど,僕も,一応は,博士課程の二年目の後半に突入した学生ですので,それなりには忙しいのです.……多分.

今回,久し振りにこっちのblog を更新しようと思ったのは,ここ以外でも色々な人が取り上げている,事業仕分けに関するアレヤコレヤについて,ちょっとだけ愚痴をこぼしたくなったからです.本当は,不特定多数の人が見られる環境で政治の話題を取り上げるのは好きではない(というか,ポリシーに反する)のですが,今回の政策と言うか,政治方針と言うか,無計画っぷりと言うか,が,僕のような立場の学生や年代的にもう少し上の研究者志望の研究員に「死ね」と言っているようなものなので,少しくらいの愚痴は大目に見てもらいたいと思います.

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13 日に行われた事業仕分けの略報(文部科学省のみ引用.引用元:http://www.47news.jp/CN/200911/CN2009111301000870.html).


▽文部科学省

【理化学研究所(1)次世代スーパーコンピューティング技術の推進】世界最高速の計算性能を持つスパコンを神戸市に整備することを目指し、10年度は267億円を要求。仕分け人は「1位でなければ駄目なのか」「国民生活にどう役立つのかが分かりにくい」などと指摘。今年5月に一部メーカーが撤退しシステムを大幅に変更したことへの疑問や責任を問う意見が続出。「一度立ち止まって戦略を練り直すべきだ」との声が上がった。判定は「(予算計上の)限りなく見送りに近い削減」だった。

【理化学研究所(2)大型放射光施設SPring―8など】兵庫県内に設置された、強力な電磁波(放射光)を用いて物質の構造を詳しく解析できるSPring―8という施設の運転や維持管理に文科省が108億円を要求。「需要や相場を考え、精緻に費用分析するべきだ」「(施設を利用する)企業の売り上げに応じて費用負担を求めるなど(収益を上げる)努力を」との意見があり、判定は「3分の1以上の削減」。遺伝子を調べて植物の機能を活用する植物科学研究事業(要求額12億円)と、マウスなどの生命科学の研究材料を収集・提供するバイオリソース事業(同31億円)は、ともに「3分の1程度削減」を求めた。

【海洋研究開発機構】「深海地球ドリリング計画推進」(要求額107億円)は、地球深部探査船「ちきゅう」で東南海地震震源域の和歌山県沖・熊野灘の海底を約6千メートル掘り、巨大地震が起きる環境を調べる。仕分け人からは「国際共同研究なのに日本の負担が大きくないか」などの意見があり、判定は「予算要求の1割〜2割の削減」となった。地震や火山の原因に迫る観測などの「地球内部ダイナミクス研究」(同12億円)の判定は「少なくとも来年度の予算の計上は見送り」または「予算要求の半額削減」の両論併記。

【競争的資金(先端研究)】国などが課題を募り、審査で採択された研究に資金を配分する制度で、6事業で計1228億円を概算要求。財務省の査定担当者は「1人で10種類以上の資金を受けている研究者もいる」と指摘。「制度をシンプル化し、削減するべきだ」と判定。

【競争的資金(若手研究育成)】博士課程修了者らに経済的不安を感じさせず研究に専念させることなどを狙った特別研究員事業(要求170億円)は「雇用対策の色合いが強い」「民間に資金を出してもらえないか」との意見が相次ぎ、予算削減となった。若手研究者養成のための科学技術振興調整費(同125億円)と科学研究費補助金(同330億円)も削減との結論。

【競争的資金(外国人研究者招聘)】ノーベル賞級の学者から若手まで多くの外国人研究者を招き、人材育成や国際化を図る資金で、141億円を要求。「2週間程度しか滞在しない人もおり、研究(資金)ではなく交流資金でやるべきだ」などの意見が相次ぎ、削減と判定された。

【地域科学技術振興・産学官連携】地域の大学や産業界の特色を生かして科学技術を振興し、日本全体の研究のすそ野を広げる狙いで、数種類の事業やプログラムを用意。概算要求は総計268億円。仕分け人は「これまでも多額の国費を投入してきたが、地方に人、物、金はどれだけ増えたのか」「地方に自主的にしてもらった方がいいのではないか」などと述べた。判定は「廃止」。

【科学技術振興機構】理科支援員等配置事業は、子どもの理科離れを改善するため、小学5、6年生の一部授業に、研究者や大学院生などを理科支援員や特別講師として派遣。来年度に5500校分、22億円を要求したが、仕分け人は「すべての子どもに平等に機会が与えられるべきだ」「理科専門の教員を採用できるような抜本的な改革が先だ」などと指摘し「廃止」と判定。東京・お台場の「日本科学未来館」(要求額22億円)は、館長で元宇宙飛行士の毛利衛さんが来館者増などをアピール。仕分け人は、運営体制の整理を求め、判定は「削減」とした。


今回の事業仕分けによって,上記のような多くの基礎科学費が予算削減や予算自体の見送りという憂き目にあっています.有名どころを挙げていけば,スーパーコンピュータ関連,スプリング8 関連などが,大きく取り上げられた模様です.また,僕の関係するような分野だと,JAMSTEC の予算も大幅に削減するように指示が出ていました.

よく,日本は「科学技術立国」だのと言って,技術や科学が世界的に評価されている,という誤解が広く蔓延していますが,実際にはそんなことはありません(もちろん,過去にあった技術を発展,独自展開してきたものが多いのは認めるが,基礎科学の発展なくこれからの世界でそれだけでやっていけるわけがないし,そこすらもこれから削減されていくだろうと思う).もちろん,世界的に見れば,そもそも「科学技術」に大きな予算を割けるほど余裕がある国自体ほとんどないので,そういう意味では上位にあるのでしょうが,そんな比較に意味がないのは明白でしょう(先進国内では下位だし,発展途上国のいくつかにも抜かれているけどね).

日本の科学の現状は,「インド,中国,韓国に抜かれるのは時間の問題」というのがセンセーショナルで,いちばん妥当な評価だと思います(つーか,基礎科学はともかく,技術に関しては,とっくにインドに抜かれているかな?).特に中国は,ここ十数年の極端な経済成長以降,(少なくとも,僕が日常的に目にしている地球科学関連分野では)もの凄い勢いで論文を量産していて,しかも,その質は年々,もの凄い勢いで向上しています(ちゃんと数えたわけではないから確かな数字は示せないけれど,最近の主要国際誌の掲載数は日本人と中国人じゃ,ほとんど変わらないんじゃないかな,と感じるくらい).

これは,あくまで私見なんだけど,基本的に過去の日本の科学は突出した天才が発展させてきたものだと思うのです.つまり,全体的な質の向上が後押ししたものではなくて,単にその人だから到達できたという,発想とか頭の良さが左右する研究が多かったのであって,決して,国の科学レベル全体の高さの問題ではなかったように思います(ここ最近は,研究者層の厚さによってなし得た研究が出始めてきたと思いますが,研究費や若手研究者数の減少,若手科研費の削減でこの辺りも停滞するでしょうね).

戦後日本の一般的な大学史を見ると,「大学生がエリートだった時代(1945〜1960 年代)」,「大学の大衆化の時代(1960 年代末〜1980 年代)」,「全入時代の幕開けと大学院重点化時代(1990 年代後半〜)」とざっくり三つに区切れると思います.この変化の背景にある思想は簡単で,「競争の緩和」による「研究者(高等教育修了者)の裾野の拡大」が目的でした.つまり,「飛び抜けた研究者を少数育成する」形態から「凡庸な研究者を多数育成する」形態に乗り換えた,と言い換えてもいいでしょう(言い方は悪いけど,天才ではない学生や貧乏人でも熱意があれば研究者への道が開けた).そして,この転換は少なくとも,国家レベルで科学の質を向上させるためには,全く間違っていないと言えます.問題は,「全入時代の幕開けと大学院重点化時代(1980 年代後半〜)」の開始早々に,日本の経済が崩壊したことと,それ以降,長らく不況から脱出できなくなったことでしょう.また,それが直接の原因かどうかはともかく,増加した「研究者志望者」に対して「研究職」が一切増えなかったのも問題でした(その結果,高学歴ワーキングプアなんてものが発生した).

今回の政策以外の政策実行の様子をみても,少なくとも現政権に「先の政権の政策に対する仁義」は存在しないようですので,上記のような問題が発生したことにもなんの感慨も抱かないことでしょう.それどころか,上記の「高学歴ワーキングプア問題」に正のフィードバックを起こしたいとしか思えません.

結局,踊らされているのは(もちろん,自己責任な部分もあるとはいえ)コネも運もなかった研究者志望の若者なわけです.学部生時代には「国を挙げて君たちを研究者にしていく」といわれ,院生時代には「研究者の裾野を広げて,日本が科学立国としてやっていくために君たちの研究に対する情熱が必要だ」といわれ,ポスドク研究員になるころには「不景気の影響で想定外にポストが少なくて,野良博士が増えたけど,これから民間との連携とか頑張るから,院を出たあとも研究を続けてくれ」と頼まれ,無給の研究員になる頃に,急にどこかからやってきた新政権に「研究とかにかける金は無いから死ね」といわれるわけです.

別に(今回の件でよく見掛ける論調のように),仁義とか,情とか,そう言うものに訴える気はないですが,こんなやり方じゃ,誰も研究者なんて目指さなくなるぜ.……というか,金に不便のないボンボン(か,絶対的に競争に勝てる自信のある天才かバカ)以外は,研究自体をすることができなくなるでしょうね,本当に(例えば,研究室クラスでも全体予算に影響が出てくるから上に行かせる学生を絞らざるを得なくなると思います.昔は,そういう文化だったらしいですが,それをやめて「研究の裾野を広げるべき」として,ようやく最近になって,そういう選別をしなくてもよくなってきていたのに……).

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ここまで,ごちゃごちゃと現状に対する愚痴を書いてきましたが,端的に言うと,僕自身がひとつのポイントになると思います.

僕のスペックを簡単にまとめると……

・某上位国立大学の博士課程在籍(大学の移動経験はなし).
・学会発表は,修士以来,国内で年に1〜2 回程度.国外は未経験.
・いまのところ筆頭著者としての論文は邦文を一編投稿中.筆頭でない論文は国際誌数編.
・国際誌に投稿できるデータを抱え込んでるけど,英語が書けなくて四苦八苦中.
・来年度の学振(DC2)には落ちた(スコアを見ると主に業績不足のせい).

……という感じです.業績周辺が情けなすぎて,泣きたくなります……orz

多分,非常に凡庸な(地球科学科の)博士課程の学生程度のスペックだと思います.回りを見渡してみても,どう贔屓目に見ても突出はしていないし,おそらく,底辺というわけでもないようです.

そんな,僕が,今回の政治方針を目の当たりにして,本気で「研究者を目指すこと」をやめたくなるくらい心をボッキリ折られた,というのが,この問題の全てだと思います.だって,「研究者を目指す人間(の大部分)は,死ね」といわれているようなものですもの…….

僕レベルの人間はともかく,僕よりも明らかに先を走っている人たちが,今回の件の世情をみてボッキリと心を折られているくらいですから,本当に今後の日本の科学は衰退していく一方だと思いますよ,マジで.

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(追記)
この件に関しては,今後,情報が増え次第,書いていくと思います.

以下,感情的なものではなく,比較的冷静に分析している(しそうな)blog へのリンク(備忘).

http://d.hatena.ne.jp/oritako/20091113
http://www.mumumu.org/~viking/blog-wp/?p=3457
http://www.mumumu.org/~viking/blog-wp/?p=3465
http://www.mumumu.org/~viking/blog-wp/?p=3462
http://shinka3.exblog.jp/12947376/
http://app.m-cocolog.jp/t/typecast/142212/126445/60723063
http://d.hatena.ne.jp/kimura-gaku/

今回の仕分けの様子の音声ファイル.

http://d.hatena.ne.jp/riocampos/20091113
posted by yulico at 03:05| Comment(1) | TrackBack(0) | おべんきょう | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年08月12日

取り敢えず,生存報告

こんばんわ.yulico です.決して,死んでいたり,日記に活動の中心を移して,このblog からフェイドアウトしようとしたりしているわけではありません.念のため.

……いかんせん,このblog で書こうと思っていること(後述)が,そうそう簡単にサラッと書き上げられることではないのと,余暇がほとんどないことが組み合わさって,更新ができない状態が続いています(その割に日記の更新頻度は高い気がするけれど).

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……というわけで,今のうちに,自分のクビを無理矢理絞める意味で,今後,書こうと思っている予定のネタを公開しておきます.

・以前から幾度も書くと言っているにもかかわらず,未だに,書く予定も立っていない「北大博物館古生物展示糾弾サイト」の顛末と個人的な覚え書き.これは,本サイトのほうにもここに書くよりは真面目な文章を書かないといけないなー,と思っているので,それと同時に書く予定(は未定).

いくつか前の,環境問題系の記事のコメント欄についたコメントに対するコメントと,コメントした読者様のサイトに対するアレコレ.

・また,それ(上)に付随して,最近,書かないといかんなー,と思っている温暖化関連のアレコレ(つまり,「環境問題(笑)」のシリーズ新作).

・今更感が溢れているんだけれど,地向斜/テクトニクスのパラダイムシフト関連で,最近思うこと.地団研のこと.科学を"信じる" ということ,などについて.

……いまのところ,書きかけているものも含め,こんなラインナップと展開を考えております.
posted by yulico at 22:32| Comment(0) | TrackBack(0) | にっき | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年07月24日

3 年生の実習

こんばんわ.yulico です.

本日は,毎年恒例の3 年生の三笠実習でした(自分が学部3 年のときを含めて5 回目?).そして,昨年に比べ,参加者が増えていました.

実習自体は,今年度から遠洋性泥岩の例として見学地点に鹿島層の上部が加わった程度で,例年と大差なく,平穏に終わりました.

そして,毎年恒例の化石採集も昨年と違ってレアものは見つけられませんでした(学生の中にはかなりレアな化石を見つけた子もいましたが).

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個人的に,今回の実習で一番面白かったのは,桂沢湖の北西部の鹿島層上部のKY-6 の様子を確認できたことです.
posted by yulico at 23:14| Comment(0) | TrackBack(0) | おべんきょう | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年07月19日

Old Friend Tour in Sapporo Dome

こんにちわ.yulico です.フィールドに行ってたりしていて忙しかったので,しばらくご無沙汰しておりました.

先日来,日記の方で散々自慢してきたことですが,昨日,Simon & Garfunkel の札幌公演に行って来ました!

この公演のニュースを知って以来,「どんなに値段が高くても行こう!」……と決意していたので,当然,アリーナで即チケットを予約しました.日記つらつらと書いているけれど,並の直撃世代よりは彼らに対する思い入れがあるつもりなので……(実際,喫煙所で何人かのおっさん方と喋ったけど,歌詞とかコード進行のディープな話を振ったら,おっさん方のほうが話に付いてこられなくて引いてたw).

以下,感想……というか,様子の報告です.

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予想していた通り,客の年齢層はかなり高めでした.髪が真っ黒な人がほとんどいない感じ(白髪的な意味でw).それでも,何組か,家族とか親子とか言った風の人たちがいて,むしろ,僕の世代よりも若い子(母親と一緒に行動してたりすることを考えると,中高生くらい?)たちをちらほら見かけました.やっぱり,僕くらいの世代は,直撃と言うわけでもなく,かりにオールドフォーク好きでもチケットの値段帯やらのせいか,ほとんどみかけませんでした.

因みにセットリストは覚えている限りUDO 音楽事務所のweb site に掲載されている名古屋公演のものと変わっていなかったと思います(実は,ポールのソロ活動時代について,そこまで詳しくないので,ソロパートに関しては分かりません……orz).スカボローフェアには"Canticle" がついてませんでした……残念!

バックバンドが凄く乗ってて(特にリズム体とギター),超良質の音が聞けました.

お二人に関しては,前半部の前半(セットリストでいうと"America" くらいまで)は,微妙に調子が悪い,というか,歌が全開ではない空気があって("America" のイントロのリフをポールがミスったり……),

「やっぱり,年には勝てないのかなぁ……」

……という空気が会場中にありましたが(それでも,二人のハーモニーは,本当に,背筋が凍り付くくらい綺麗でした),一回目のMC からデビュー曲"Hey Schoolgirl", カバー曲"Be Bop a Lula" をやりはじめたくらいから徐々に声が出てきて,"Mrs. Robinson", "Slip Sliding Away" あたりの名曲ラッシュ時には,「ほとんど往年のライブと同じくらい声が出てるんじゃないか?」というくらいのできでした(……とはいえ,往年のライヴなんてCD でしか知らない世代なんですがね……).

アートのソロパートで,アートが,「じつはむかしおしのびでにほんをまわったことがあって……even Hokkaido」と日本語(英語まじりw)でMC をして笑いを取ったり,その頃から,はじめは色々な意味で緊張感溢れていた会場の空気もほぐれてきているのを感じました(実際,僕も前半は「伝説の音を一音たりとも聞き逃してたまるか!」と肩肘張っていたので,人のことはいえませんが……w 実際,あの音の中にいると,そんな感覚をかなぐり捨てて音の中に埋没していく多幸感に抗うのがバカバカしくなって,もっとゆったりと音に浸る気にさせてしまうんですから,凄い音楽だと思います).

後半は凄すぎて言葉で表現するのがバカらしくなってしまうので,感想もクソもありません.ただ,"Bridge over troubled water" のアートソロ〜ポールソロ〜デュエット〜アートソロ(ラストのサビ)……という流れは,まさに圧巻でした(だって,70 手前のおじいさんが原キーで,しかも,凄い声量で歌いきったんだぜ!).歌い終わった瞬間,全観客が圧倒されて,一瞬,会場がシーンとなったあとの大拍手&スタンディングオベーションは一生忘れないだろうと思う…….

アンコールも,セットリスト通りでした.一回退場したあとに,二人だけ出てきて"Sounds of silence" が始まり,曲の途中からバックバンドが加わって,"Boxer" で二度目の締め.退場後,今度はかなり間をあけて,お約束の「仕方ないな〜,もう一曲やる?」みたいな小芝居のあとに(笑),"Leaves that are green" をしっとりと聞かせて,二人が観客を煽って,ラストソングに持ってきたのが"Cecilia"(←ちなみに僕が一番好きな曲)!!!そして,フォークのコンサートなのに,会場がオールスタンディング状態へ!!"Cecilia" を歌い終えたあとにバックバンドのメンバー紹介があって,なんと,もう一回"Cecilia"(のサビ)を熱唱!……と大興奮の内に終幕したのでした.

会場を出る方々から「冥途の土産ができた」的な発言が出てくるのを聞きながら(w),心底,今回,来ておいてよかったと思ったのでした.

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実際,何曲かメロディーライン取りを変えて歌いやすくしていたりしていたとはいえ(そりゃあ,流石にあのお年ですもの),原キーで全曲歌いきるとは思ってもいませんでした…….バックバンドの方々も,心底この音楽を作っていることを喜んでいるような感じで,敢えて'82 年のライブのときの演奏を完全再現みたいな遊びをしてみたり,逆にソロでは「これ,本当にフォーク?」みたいな大暴れをかましてみたり,聞いていて凄く楽しめました(まぁ,観客のおじさんおばさんがたはぽかーんとしてたけどw).

個人的に「すごいなー」と思ったのは,ベテランセッションマンの指が転んだときの誤摩化し方w.昨日は,特にピアノの方が緊張のせい(?)か何度も指が転んでおられたのだけれど,無表情で,さも「こういうちょっと外してジャズ風のアレンジにしているんだよ!」という感じで,同じリフをくり返すときに敢えてさっき転んだ音を入れてみたりとかしているのをみて,「流石!」と思ってしまったw ギターも,ソロの最初におかずを持っていきすぎて「ヤベー,まだ結構ソロの残り時間あるな〜」みたいな顔したあと,アームで音を歪ませる芸だけで,残り時間を押し切ったりしてたしw

アートの,少し斜に構えたような,でも,格好付けきれなくて,手の位置をどこにおこうか,ふらふらさせながら,結局,格好よくはなっていない,あの立ち姿も生で拝むことができたし(笑),何にしろ,素晴らしいコンサートでありました.
posted by yulico at 15:51| Comment(2) | TrackBack(0) | 音楽 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年06月29日

すげー

流石というか,なんというか,ひとつ前の記事を上げたら,このblog の来客数が一瞬でもの凄く跳ね上がった.

やっぱり,10 年以上が経過したとはいえ,エヴァの影響力は侮れん…….
posted by yulico at 04:23| Comment(1) | TrackBack(0) | にっき | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年06月28日

ヱヴァンゲリヲン:破(ネタバレ含む)

注:この日記は現在公開中の「ヱヴァンゲリヲン:破」のネタバレを含みます.未視聴の方はご注意下さい.因みに未視聴の方にも安全な簡単な感想は日記に書いたので,どんな様子だったのかを知りたい方はそちらをご覧下さい.

こんにちわ.yulico です.以前も書いた通り,中学生当時,庵野に盛大に釣られてしまった中二病患者であった人間の義務として,昨日の公開初日に新劇場版の「破」を見に行ってきました.会場の様子などはこちらの日記にまとめていますので,ご覧下さい.以下は,読んでいる人が既に視聴済みなものとして,感想を書きますので,くれぐれもご注意下さい.

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(以下,ネタバレあり)
posted by yulico at 17:53| Comment(0) | TrackBack(4) | にっき | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年06月26日

マイケル・ジャクソン

今朝方,衝撃的なニュースが届きました.King of POP ことマイケル・ジャクソンが亡くなったということです…….

あと数百年は生きていそうな人だったのにとか,電池が切れただけじゃないの……という類いのジョークはさておき,かなりショックです.特にファンだった,というわけではありませんが,流石に「Thriller」や「Bad」や(Slash が参加した)「Dangerous」あたりのアルバムは持っているし,普通に良質のポップスを量産しつづけたバイタリティーと,ソウルミュージックを他ジャンルの音楽とフュージョンしてマイケル・ジャクソンというジャンルにまで昇華してしまった天才性には敬意を表します.歌もダンスも神クラスだしね.

僕の個人的なマイケルのベストシングは "We are the World" のサビ入り(一回目のソロ)の天使のような優しい歌声です.ちょっとロックな風味のあるソウルというイメージが強かったけど,アレでガラッとイメージが変わって,当時("We are the World" をはじめて聞いたのは中学入った頃だったかな?),メタル厨だったのにCD 買い漁った記憶があります."Heal the World" とか "Human Nature" とかバラードが良いんだよね,本当に.他にも,PV も格好良いのが多くて(僕は「Bad」のPV が一番好きでした),こういう言葉は嫌いだからあんまり使いたくないけど,マイケルは文字通り何から何まで気を使って物事をプロデュースしたという意味で「アーティスト」だったなぁ,と思います.日本でも某ニコニコ動画で大量のMAD が作られたり,空耳アワーで "Smooth Criminal" のイントロが大賞取ったり(「パン!茶!宿直!」と言えば通じるんじゃないかと思う),ゴシップも含めて,ある意味世界中でいちばん愛されていた人だったんじゃないかと…….時代のせいもあると思うけれど,多分,二度とこのクラスのスターは出ないだろうと思います.

ようやく児童虐待裁判絡みのゴタゴタが大方片付いて音楽業界に本格復帰する直前にこんなことになってしまったのが,本当に悔やまれます.

合掌.
posted by yulico at 21:25| Comment(0) | TrackBack(0) | 音楽 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年06月25日

Y 氏からの質問,または,環境問題(笑)6

こんにちわ.yulico です.

先日,この記事某サイト様ネットストーキングされた際に,匿名希望のネットストーカー様より下記のような質問を頂きました.

質問の内容的に,このblog で再三扱ってきた内容なだけに「はやく答えなきゃなー」とは思っていたのですが,そんなに自分に余裕がなかったことと,問題が結構難しいこととで,延ばし延ばしになってしまっていたんですが,某サイト様が突如閉鎖してしまった!」という事態を受けて,責任を果たすという意味でも,記事を書く踏ん切りがつきましたので,某サイト様リニューアルオープンされたので,記念&お祝いに質問に答えさせて頂きます.

正直,こんな記事を書いて,舌の根も乾かぬうちに,「ニセ科学批判」ではないものの(以下で扱う「地球寒冷化」は必ずしも「ニセ科学」ではないし,僕自身は批判する気がない.逆に論理の欠落した "地球温暖化" は,ときにニセ科学になり得ることもある),それに類似した記事を書くというのもなんか気持ちが悪いのではありますが,あくまで「ニセ科学」を批判するのではなくて,検討に値すると考えられる情報を提示するのが目的であって,この記事をもってニセ科学を批判したり,こっちが科学的に正しい(笑)なんて主張をするつもりは毛頭ありません.当然,今回,僕が提供したような情報をもとにお読み下さったお客様が何を考えられるか,まで誘導する気なんてありません(責任持てないので).

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ちなみに,この記事は「環境問題(笑)6」に当たります.本シリーズの過去ログはこちら,または,下記リストからご覧下さい.今回は,下記の質問に対する回答がメインの記事ですので,まず,過去ログをじっくり読んでからお読み下さい.

「環境問題(笑)」
「環境問題(笑)2」
「環境問題(笑)3」
「環境問題(笑)4」
「環境問題(笑)5」

また,以下の文章はこのガイドラインに基づいて書いています.つまり,無尽蔵のバカは想定していません.仮に下記の質問に登場する A さんが日本語が通じないレベルのおバカさんだった場合は想定の範囲外ですので,ご了承下さい.

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Y さんから僕に寄せられた質問は下記のようなものでした.


 yulico さんこんばんは。匿名希望のYと申します。

 最近、友人A氏が「最近、地球が寒冷化してきている」と言い始めて困っています。「温暖化はマスコミによる風説の流布」「太陽の黒点の活動がどうのこうの」「地球は氷河期に突入している」とか言っているようですが、マイナスイオンとプラズマクラスターの区別もついていない様子。とりあえず、「あなたの信心深さが温暖化から地球を救った。さらに、ヨシミCDスペシャルエディションを1枚100万円で100セット買えばあなたは永遠の命を授かる」と言いましたが、買ってくれませんでした。

 どのようにすれば売りつけられるでしょうか…じゃなくて、えーと。

 どのように切り返せばいいのでしょうか。「地球寒冷化論者」に対する、ウィットに富んだうまい切り返し方を教えて下さい。


そんなの「地球温暖化は信じないのに,なんで寒冷化は信じるの?科学者は何も『信じて(believe)』はいないよ?」っていえばおしまいな気もしますが,それじゃあんまりにも不親切ですし,ウィットに富んでいるとも思えないので,以下に別な回答例を用意しましたので,長い記事なのですが,是非,ご一読下さい.

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<質問内容と A さんの主張への解説とサジェスチョン>

まず,最近、地球が寒冷化してきているという A 氏の主張ですが,少なくとも記録が残っている時代以降を議論の対象とするのであれば完全に誤りです.タイムスパンの取り方には様々な方法がありますが(例えば,1 年のスパンで見るのであれば,毎年,温暖化と寒冷化をくり返すし,1 日のスパンで見れば,毎日,温暖化と寒冷化をくり返すわけです),(根拠の有無はともかく)数十年〜百数十年程度のスパンで見れば,産業革命以降,年間平均気温は上昇し続けています.もう少し長いスパンで概観するのであれば,いわゆる万年雪が各地で融解しているという報告があり,現在(正確には1970 年代以降の30 年間)が,過去 10000 年で最も暖かい気候であったことが明らかになっています(1970 年代に行われた調査の際に過去 10000 年以上の記録を保持していた氷のサンプルが 1990 年代以降の調査では,温暖化に伴い融解したせいで記録が散逸してしまっていた,という報告があります.つまり,過去 10000 年間,その地域では氷が融けることなく積もり続けていたにも関わらず 1970 年代以降,その地域でも氷が融ける気温になった,ということを示します.因みに 10000 年より古い時代は,大雑把にいえば氷期なので,当然,もっと寒いです).これらは,観測事実ですので否定することはできません.

当然,タイムスパンの取り方次第でいくらでも恣意的に解釈できますし,上記のようなタイムスパンの取り方が恣意的なものかもしれません.しかし,少なくとも,よほど恣意的にデータを解釈しない限り,現在までに寒冷化が起こっている,という言い方をするのは難しいと思います.……というか,数値データを他人に納得させられるようにいじくってやるのが仕事のひとつである僕でも,難しすぎてそんな仕事はやりたくないです(多分,できないし).

次に,温暖化はマスコミによる風説の流布ということですが,これに関しては,サイエンティストの側からは何もいうことはありません.だって,マスコミさんが何を言っているのかなんてサイエンスとは関係ないですもの.でも,サイエンティストの言っていることにはそれなりの根拠があるので,ちゃんと読んでから自分なりに判断してくださいね.

更に,太陽の黒点の活動がどうのこうのという A さんの主張ですが,現在,太陽の黒点が無くなって(少なくなって?),太陽からの入射が減少している(黒点活動が活発な時期が一番太陽の放射量が多いので,黒点が少なくなると地球への入射量が減る計算になる→寒くなる),ということを指しているのだと思います.

こういうシステムは,いわゆるニセ科学批判をする人たち(笑)に,「ニセ科学(笑)」として取り上げられることが多いのですが,実は,非常に重要なシステムです.なぜなら,地球の気温を作るメカニズムの中で,太陽からの入射量は非常に大きなウェイトを占めているからです(「環境問題(笑)」に詳しく書いていたはずです).

例えば,過去に小氷期(Little Ice Age)というイベントがあり,その際の気温低下(あとでもうちょっと解説しますが,正確には「地球寒冷化」ではないので敢えてこう書きます)の原因のひとつとして「太陽黒点の減少の影響である」というのは有力な仮説です.

因みに,小氷期というのは「中世の温暖期(西暦 1000 年〜1300 年くらい)のあと,1300 年〜1800 年代初頭までの期間中の,気温低下が1℃未満に留まる,北半球における弱冷期」のことです.昔(十数年前くらい)は,もうちょっと広範囲に及ぶイベントで,もうちょっと冷え込んでいたと考えられていたようですが,現在では,北半球高緯度地域で顕著に認められる(つまり汎世界的ではない)「ちょっとした冷え込み」と解釈されています(小氷期は「テムズ川が凍っていた!」などのセンセーショナルな物言いで語られるため,誤解されていることが多いイベントです.しかし,冷静に考えれば,そもそもロンドンは北緯 51° に位置します.地理的なセッティングが全く違うので単純な比較は危険ですが,これはサハリンと同程度の緯度です.基本的に,高緯度ほど季節変化が激しく,全球的な気候変動の影響を受け易いので,ちょっと冷えれば,冬に川が凍る程度のことはあっても驚きません).

先程も述べた通り,この小氷期を引き起こした無数の原因のひとつであり,主因の候補と考えられているのがマウンダー極小期と呼ばれる「太陽黒点が極端に少なくなっていたために,地球への入射量が減少していた時期」の存在です.つまり,過去にも太陽黒点が減少していた時期が実際にあり,その時期に気温低下が起こっていたことが確実に分かっています(多分,「マウンダー期が原因のひとつである」という仮説はそう簡単に覆らないと思います).そういう意味では,太陽黒点の減少は寒冷化の原因になりえます.しかし,小氷期に関する研究の多くで,「太陽黒点の減少だけでは,小氷期の気温低下のすべてを説明するのは難しいので,その他の要素も伴った複合的な気温低下イベントである」とされています.また,気候モデルの上でも太陽黒点の減少程度で十分に地球を冷やすのは難しいようです.そんなわけで,小氷期に関しては,例えば,太陽黒点の減少の他にも,複合的な原因のひとつとして火山噴火の頻発による成層圏でのエアロゾルの増加,などが挙げられています.

この辺りの太陽活動の影響による地球環境の変動にまつわるお話は,面白いのですが(学問的にも政治的にも)難しくて,容易に扱えるものではありません(ので,ここではこの程度で抑えておきます).以前,丸山先生の主張で有名な「宇宙線ー雲発生による寒冷化の話」をトピックとして扱ったので,今度,「太陽黒点と小氷期」というトピックでちゃんと記事を書こうと思いますので,ご期待下さい.

そして最後に,地球は氷河期に突入しているという A さんのお言葉に対してです.

(初学者というか素人に学者の卵が大人げなく無遠慮に突っ込むのであれば)氷河期に突入しているも何も,少なくとも中新世の中期以降,かれこれ 1000 万年以上前から現在に渡ってずーっと氷河期です.もっというと,確実なデータはないですが,おそらく 3000 万年前の始新世/漸新世境界の寒冷化イベント(Oi1)以降,ほとんどの時代は氷河期になるはずです.なぜなら氷河期という語は,「地球に氷河(氷床)が存在する時代」と定義されているからです.現在は,グリーンランドと南極に巨大な氷床がありますので,氷河期に当たります.

(初学者に優しく接するのであれば)氷河期という語を誤用しているのであろうと推察できますので,この言葉は,地球は氷期に突入していると読み替えるべきでしょう.因みに氷期とは,「氷河期の中で特に寒かった時代」を示します(逆に暖かかった時代を間氷期と言い,現在は間氷期であるといわれています.これらの氷期ー間氷期という語は同位体比の変動に基づいて明確に定義されています).

で,読み替えた地球は氷期に突入しているという A さんの主張に対してですが,氷期なのか間氷期なのか,ということは終わってみないと分からないので(あくまで同位体比に基づいて定義されるので),原理的に分かりません

ただし,少なくとも第四紀以降(およそ 260 万年前〜現在)の氷期ー間氷期変動は,地球の軌道要素(Orbital Forcing:通称,ミランコビッチサイクル)に強く影響されています(正確に言うとそれ以前もずっとそうなんだけど,第四紀以降が特に有名なので).中でも,ここ最近の 100 万年間(MIS 11 以降)は,10 万年くらいの周期が卓越していることが分かっています(地球の公転軌道の離心率の変動が 10 万年の周期を示します).現在は,前の氷期で一番寒かった時期であるLGM(Last Glacial Maximum: 最終氷期最盛期)から高々 20000 年しか経っていないので,10 万年周期が継続していると考えるのであれば,むしろ温暖化が進行している時期に相当するはずで,氷期に突入している時期に相当するとは考え難いです.仮に,前回の氷期(最終氷期)から現在の間氷期の間に,なんらかの原因で,地球の軌道要素の中でも一番周期が短い,最差運動の周期(約 20000 年周期)が急に卓越しはじめたとするのであれば「現在の地球は氷期に向かっている時期に相当する」と,無理矢理いえなくはないですが,地球の軌道要素は天文学的に単純に計算できるので,そういう可能性はほぼゼロであることが分かっています(……というか,現在の軌道要素の計算が狂うためには,外部から軌道要素を変えるような力を与える必要があります [ex. 月ができたときくらいの超巨大隕石の衝突].そして,そんなことがあったら温暖化していようがしていまいが,間違いなく生命圏が崩壊しているので,どうでもいいです).

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……と,このように A さんには,基本的な(悪く言えば常識的な)基礎データに関する知識の欠如が認められます(本当に知らないのか,見なかったことにしているのかは分かりません).基礎データの解釈の仕方は各個人の勝手ではありますが,正規の手続きをへて得られている基礎データ自体を見ないことにするのはサイエンティフィックな態度とはいえません.すべてのデータを考慮していて,それらの多くを大部分に渡って整合的に説明することができ,かつ,棄却したデータに対してその根拠を示すことができるのであれば,「今後,地球が寒冷化する」と主張するのは自由ですが,そうでないのであれば,その主張はサイエンスとは言い難いと僕は思います(「今後,地球が温暖化する」という主張も同じです.).

A さんは,どこかで聞いた「寒冷化の話」を,宗教的に信奉しているという状況にあるように思えます.つまり,科学に対する態度を根本的に勘違いしていると言わざるを得ません.

科学は信じるものではありません

こことかこことかこことかここでもこれまで散々論評したことの蒸し返しになるのだけれど,科学に対して人の取り得る態度は論理展開を追試することのみであって,それ以上でも,それ以下でもありません.そして,その論理展開に欠落がなく,今のところ反証が挙げられていないのであれば棄却することはできません(ここは勘違いしないでね.信じるのではなくて,棄却することができないだけだからね).

某丸山先生の著書の中に,2008 年の日本地球惑星科学連合大会における「地球温暖化 V.S. 地球寒冷化(正式名は『21 世紀は温暖化なのか,寒冷化なのか?』だったと思う)」のセッションで,挙手調査において多くのサイエンティストが今後の地球環境の変化に対して「温暖化」でも「寒冷化」でもなく,「わからない」と答えた,という下りがあります.このような結果になるのは,そもそも科学者にとって仮説というものは「支持する or 支持しない」で判断するものではないからです(言ってしまえば,この挙手調査の際に「わからない」以外の選択肢に挙手をした人は,なにか科学とは無関係な政治的な意図があるということです.または,ただのばk……あれ,こんな夜遅くにチャイムが……?誰だろう?).

……少し話が逸れましたが,つまり,A さんに対する回答というのは「宗教の熱心な信者に対して何をいえば良いのか?」という問題と等価です.僕個人は A さんがそれで幸せならば別に何かを知らせる必要も,回答する必要もないと思います.日本は信教の自由が保証されている国ですからね.

しかし,僕も創価学会員の折伏で苦労した経験がありますので,質問者の Y さんの苦労が偲ばれます.そこで,A さんに対するウィットに富んだ回答の例をいくつか考えてみました.

「あー,それ知ってる!このあいだテレビのドキュメンタリーでやってたよね!(『テレビで茂木健一郎が言ってた!』も可)」

「うん.昨日も昼は暖かかったのに,夜は涼しかったよね.多分,今日もじゃないかな?」または「うん,うん.9 月を過ぎるとやっぱり気温も落ち着くよねー」または「何言ってんの?これから夏になるんだぜ?」

「二酸化炭素を増やして温暖化を促進させるために,電気(火力発電)を無駄遣いするべきだよ!そのために,ヨシミCD を沢山購入して無限ループで垂れ流すっていうのは Do-Dai ?」(販促 ver.)

「だからそんなに興奮してるのか!(←体温で空気を暖める的な意味で)」

「(ソースの論文を)zip でクレ」

「寒冷化するならエコに余分なエネルギーを使って,無駄に二酸化炭素を出している日本の現状は素晴らしいじゃない.政府もそれを見越してやっているんじゃないの?それのどこに文句があるの?」

「なんでそんなに unique な考察があるのに論文書かないの?」

「(真顔で)な,なんだってー!!」または「A さん,マジ,っっっ(溜め)っっっパネぇっすね!」

「俺は温暖化でおにゃのこの服装が開放的になった方がいいなー」



……以上,順不同です.いかがでしょう?ひとつくらいお気に召す回答例があったなら幸いです.

※別にこの記事を紹介してもらっても全然構いませんけれどね.ただ,僕は,日本語の通じない相手にはとことん冷たいですが.

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こんなの(ニコニコのアカウントをお持ちの方のみ)を聞きながら勢いで長文を書き上げたので,ミスをみつけ次第,ちょこちょこ修正入れると思います.

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15:30 6/25 一部文章を修正.
posted by yulico at 01:36| Comment(1) | TrackBack(0) | おべんきょう | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする