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このアルバムには,いい意味で期待を裏切られました.ただし,17 年間も死蔵したことがプラスに働いているとは到底思えません.こういうハードロックに大仰なバック隊をくっつけたり,ひたすらオーバーダブを重ねて重厚感を出したりするような手法は,ここ最近の流れからいくと「ちと古くさいんでないか?」と思ってしまいます…….まぁ,僕は好きなのでいいんですが…….
曲のクォリティーは比較的良いと思います.Axl の最近の歌声は,これまで全然聴いていなかったのですが,以前("Use your illusion" の頃)より上手くなっていますね.以前は鼻についていたヤンチャ感がいい感じに抜け,落ち着いた歌に声がしっくりハマるようになっているのにびっくりしました.
個人的には,こういうタイプの曲でいいから,また,初期メンバー(除くドラム)でやってほしいなーとか思ってしまいます.やっぱり,Axl の声の後ろにはIzzy 先生のリズムギターがいてほしいなー,とか.あと,Slash のソロも欠かせません.本作で弾いている人のようなテクニカルなギターは嫌いじゃないのですが,Slash のブルース魂は受け継いでほしかったなー,と言うのが正直な感想です.
今作を聞いて,真っ先に思ったことは,Axl はプログレ的な世界に行きたいのかなー,ということ."Use your illusion" の頃からそういう傾向は若干見られていた気がしますが…….そういう風にプログレ路線を目指していると解釈すると,一時的にバケットヘッドみたいなタイプのギタリストをフィーチャーしていたのにも納得ですし,今作の曲中で無意味に電子音が鳴るのにも得心がいきます.
正直,特に電子音のアレンジは上手くないと思うけど,曲想を練って,もっと複雑な動機を持てばこの路線はアリなんじゃないかなー,とか勝手な妄想をしたくなります.しかし,それをやりすぎると,最早,ロックをやっている意味が霞んでくるし,ハードロックを名乗るわけにもいかないだろうなー.いや,既にその兆候はありますが…….
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〜演奏面〜
ギター隊は結構均整取れていると思うけど(役割分担が上手く機能しているんだろう),Ky のちぐはぐ感は狙っているんだとしたらあまりにセンスがないし,ただちぐはぐなだけならどっちかをクビにしていいレベル.
やたらにキーボードがフィーチャーされているのが気になったので調べてみたら,現在のメンバーには鍵盤屋が二人もいるらしいです.どおりで,一曲の中で鍵盤のセンスがちぐはぐなまま垂れ流されているわけですね…….鍵盤屋は,ピアノ音を出す人の方が遥かにハイセンスで,曲に溶けてる気がします.シンセ系の音を出す人の音は,スケールの選び方がモサいうえにありきたりでツマラナイ印象を受けます.
そして,何よりもドラマーが下手くそ&ナンセンス過ぎます.ここまでセンスのない太鼓叩きは久々に見ました.
ここ(Wikipedia アメリカ版)をみると,どーもセッションドラマーっぽいです.バンド経験もあるみたいですが,よく知らないバンドなのでなんとも言えません.バケットヘッドのバックでいたみたいだけど,もしかしたら,そういう他の楽器を目立たせる叩き方しかしてきてない人なのだろうか……?
リズムの安定感はともかく,可哀想なくらいセンスないです.
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〜総評〜
正直,各曲のテンションの高さにはびっくりしました.あと,長年練り続けてきただけあって,どの曲も間違いなくオリジナリティーの塊です.それは,素直に評価できます.
ただし,曲はよくても,各個の音楽的なセンスと音取りは,新生ガンズというバンドのクセではなくて,Axl の指示のままに忠実に弾くだけの犬が集まった感じでちょっと切ないです.バンドってもっとお互いの主義主張の真剣勝負の場であってしかるべきじゃないかなー,と僕は思います.そういう緊張感がバンドの色を作っているわけだから,バンドでやる意義があるのであって,そうでないならGN'R という名に固執して,バンドスタイルを堅持する意味が分かりません.
次回作(いつ出るんだろう?)では,もっとバンドらしくAxl の思惑を外れたヤンチャな音を聞かせてくれたらいいなー,と思います.