僕のお仕事を簡単に説明するとタイトルに書いた通り「何もない棒に目盛りを入れるだけの簡単なお仕事」と言うことになります.もう少し分かりやすく言うと,悠久のときの中で堆積した地層がいつできたのかを,細かく目盛りを入れた物差しを作ってやって見やすくする,ということです(全然分かりやすくなっていない件).
具体的に言っても誰にも分かってもらえないと思うので,まぁ,気にしないで下さい.
その仕事のなかで,この棒(地層)に「時代A」と「時代B」の境界を引いて下さい,という問題が出されたわけです.
世の中,普通の人は知らなかったり,知っていても意識していなかったりするけれど,どんなものにも定義があります.例えば,A4 用紙というのはISO 216 が定義した210 mm × 297 mm という大きさの紙である,ということが決まっているから「A4 用紙」といえば話が通じるわけです.そして,適当な紙を取ってきて,それがどういうサイズなのかを知りたければ,確実にサイズが決まっている定義と比べてやればいいわけです.
当然,時代の境界にも定義が存在します(ここで偉い学者さんが話し合って決めています).
この会議では,
・時代の境界を「何(大抵は化石)」をもって定めるか(定義問題)?
・どこの地層を一番典型的な時代境界のお手本にするか(模式地問題)?
……などが話し合われています.つまり,世界中の人たちが,「時代A」と言った場合,どこの地層のどの化石で定義されたものなのか?……ということを明確にするために日々研究が行われているわけです.
逆に,全然時代が分からない地層の時代を決めるには,「お手本」となる地層と比べてやれば良いわけです(この「比べる」ということの困難さに関しては今回の話と無関係なので割愛します).
そんなわけで,「この地層に時代A と時代B の境界を引く」なんて言う冒頭の問題は,定義との比較をするだけの簡単なお仕事であることが分かると思います.
そう……定義さえあれば…….
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時代の定義がない(正確に言うと定義はあるけれど,お手本になる地層が定められていない)ということは,決まった何かと比較すればおしまい,という状態とは違い,自分の知り得る限りの全ての情報を,自分の知り得る限りの全ての先行研究と比較して,自分なりに「定義もどき」を設定して,区分をしてやることになります(そして,それを論文として明言した時点で,自動的に自分もここに定義のひとつをプロポーザルをだしたことになるので責任が重い).
死ねと?
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正直,問題があるからと言って,定義となるものを設定していない状況を長らく続けているのはどうなのかなー,と思います.当たっていようがいまいが,取り敢えずの定義を設定しておくのもありなんじゃねーの?どうせ,人間の決めた恣意的な基準面なんだから…….
以上,こんな意味の分からない修行をここ最近続けていたから更新が滞っていたのですよ,というお話でした.
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……なんてことを書いていたら,同僚が,しかも,今日の昼に全く同じようなことを書いていた件.
エントリは僕の方が遅いけど,別にパクリじゃないよ?実際,このネタは更新停止の言い訳と現実逃避に一週間くらい前から書いてた話だから…….
……うん.
同じ研究室で同じ学年の人間が同じことを同じ日に同じような個人blog に書いてるとか,マジきめえwww
私も生物の生殖器を「色」で分類するという前例の見つからない作業をした際に、かなりテキトーに定義決めちゃいましたね(デジタル測光して彩度がどうのこうの)。まぁ、こんなことするのは僕だけだろうと思ったので、あんまり責任意識は感じてませんでしたがw
1hyde の定義については僕もニュースを聞いてびっくりしましたwww どうも,150 cm 台ですらなくて140 cm 台だったとか.
> 私も生物の生殖器を「色」で分類するという前例の見つからない作業
なんか,すごい仕事ですね.
結構,動物の分類群ごとに傾向とか出たりするんでしょうか?とんと検討がつきませんw
最近"病気"のウニが多いってことで、「じゃあ、どこにどんだけ病気のウニがいて、そいつらの年齢分布とか何食ってるのか、、、」というのを調べてたことがあるのですが、人間が"病気"って言ってるだけでウニは元気なもんですから(要は食欲が湧かない色をしているだけ)、どのへんを"病気"と位置づけるかは"なんとなく嫌な色"からスタートしちゃってる。とはいえ、"なんとなく"で論文書けるわけないからなにかしら定義がいるので、テキトーに彩度がどうのこうのっつって勝手に線引きして段階付けしちゃいました、ってのが真相です。
というわけで、ウニが"病気"であるか否かは、僕の食欲をそそる色であったか否かで定義されてしまいました。チーン。
これまた随分と定性的な話で,苦労しそうですね…….しかし,その仕事のおかげで色味のいいウニがおいしく食べられるようになったわけですから,ウニ好きの一人としてありがたいですw
しかし,どういうものにしろ,定義がないものを議論しようとするのは苦労しますね…….