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世情を眺めてみると(と言っても,僕の見ることができる世情なんて2ch やどこぞのつぶやきなどの限られたものな上に偏っている意見ではあるのだけど),どうやら(関係者を除く)世の中の多くの人々は,「研究者に死ねというのはいくらなんでもヒドい(よく解らないけど,科学技術を捨てたら日本にはなにも残らないんじゃないの?派)」という意見と,「基礎研究が何の役に立つのか説明できない方が悪い(自己責任・自業自得だよ派)」という意見と,「英断だ!科学研究関連予算なんて本当に無駄だから全部カットしてしまえ!(科学研究なんていらないよ派)」という意見と,「事業仕分けの仕方に問題があるから,見直すべき(そもそも制度が問題だよ派)」という意見に分かれている気がします.大体の場合,前の2つの意見が枢要を占めて言い争いをしていて,後の2つの見解を述べる人がちょこちょこと現れる,という比率です.そして,多くの場合,そこに,僕のような立場の研究者見習い〜ポスドク研究員と思しき人々のあげる悲鳴や断末魔の叫びのような意見が挿入されています(例:http://hamusoku.com/archives/768639.html,http://blog.livedoor.jp/dqnplus/archives/1337343.html など).
僕自身がこの政策方針に対して思うことは,前の記事で言ったので,そちらを参照願いたいのですが,端的に言って世紀の愚策だと思います.
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今回の事業仕分けは(若手研究者の大粛正に留まらず),今後の研究者の研究計画策定そのものに大きな影響を与えるであろうことが容易に予測されます.即ち,政権をもつ人々(や全く研究に理解のない多くの一般市民)にとって「意味があると思い込ませられるかどうか?」が,今後の研究プロジェクトの策定における最大のポイントになるでしょう.
もちろん,これまでもこういう論点はあって,多くの研究者は「(社会や国のためになるという)建前がないと好きな研究ができないんだー」なんて冗談めかして語っていたものです.しかし,今回の仕分けの結果を受けて考えると,これまで以上に無知な人間が研究予算に口を出し,審判していく世界になることが容易に想像できます.つまり,これからは,これまでのような文部科学省の役人よりもさらに研究に対して無頓着な一般人に毛の生えた程度の "仕分け委員" さまが,研究自体の生死を決めていくことになるのです(つまり,省内の予算折衝までの段階で専門家集団によって高く評価されていた研究事案であっても,"仕分け委員" さまの裁量ひとつで予算そのものが吹っ飛んでしまうことがあり得るわけです.少し穿った見方かも知れませんが,"仕分け委員" さまが日本語を理解できないお馬鹿さんだった場合,「(私たちにはその研究が理解できないし,必要とは思えないから)予算は出しません」という事態になり得るわけです).
えー.
なんだか,最早,ギャグかなんかのようですが,スーパーコンピュータ関連の予算削減の記事などを読むと,
「(コンピューター性能で)世界一を目指す理由は何か。2位ではだめなのか」という仕分け人の発言。
「一時的にトップを取る意味はどれくらいあるか」(泉健太内閣府政務官)「一番だから良いわけではない」(金田康正東大院教授)「ハードで世界一になればソフトにも波及というが分野で違う」(松井孝典・千葉工業大惑星探査研究センター所長)などと、同調者が相次いだ
(http://sankei.jp.msn.com/politics/situation/091113/stt0911131914010-n1.htm より引用)
……なんていう数々の危険発言が飛び出しており,どうやら夢でもネタでもなんでもなく,現実の模様です(つーか,同調者の中にもろにスパコンを使った研究で被害が出そうな人間がいるのがアレですが……).
そのうち,研究者が「こういう意味で社会に役に立つ」という観点からしか研究テーマを探せない世界がくるんだろうなぁ…….それって,本当に日本の科学の終わりですよ.
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研究ってさ,そりゃ,社会の役に立つんだったら,そういう研究のほうが好ましいと,僕だって思いますよ.でも,「現時点で社会の役に立つことが解っている研究」って,基礎科学の分野にはほとんど存在しないし,仮にあったとしても基礎科学としては,ほとんど終わりかけな(先の見えている)分野なわけで……(応用になると基礎科学の範疇ではなくなるので).仮に「役に立つ可能性がある研究」というところまで範囲を広げたって,その数や将来性はたかが知れています.
じゃあ,そういう研究を見つけるためには,どうすれば良いかといえば,単純に研究者と研究分野の多様度を高めるしかないと思います(そうでなければ,ノストラダムスクラスの予言者を育成して,次にどの分野が大々的に発展するかを予言させるために国家予算をつぎ込むべき).各々の研究者に,やりたいことをやりたいようにさせるべきなんです.そこに(科学分野に関して)無知な第三者による評価やなんかが入り込むこと自体が,本来,ナンセンスなんです.
本来,貴賤も尺度もなにもないものに対して,適当に線を引いて,無理矢理,「評価(と称するなにか)」しようとしたって,なにも評価できるわけがないはずなんだけど,そんなこともわからないんだろうか…….それとも,本当に「民意(と称するなにか)」が研究者の生死に勝ると思っているんだろうか?(多分,後者なんだけど)
ノーベル賞受賞者が怒るのも無理は無い。
民主党の蓮舫のような科学技術に無知で、日本の将来に無関心な人物が仕分け人では、致し方ないこと。
毎年2.5兆円の税金を使う高速道路無料化は、無駄な予算であるから、事業仕分けによって廃止してもらいたい。
こういうマルチポストって手動でやっているのかね?